課題はサービスをスピーディーに拡充できないこと
ー 「Re@nove」の活用に至った背景を教えてください。
「DREAMS」の課題は、お客様の要望に合わせてサービス内容を拡充したいのに、それを支えるシステムの柔軟性が乏しいため、思うようなスピードで対応が行えないこと。具体的な理由は以下になります。
「DREAMS」のサービスを支えている「DREAMS DB」と呼ばれるシステムは、親会社(三菱UFJリース株式会社、以下、MUL)の基幹システムと密結合していたため、「短期間での機能追加や改修が簡単ではない」という問題を抱えていました。影響確認などに時間と工数を要し、短期間の対応や大規模な改修が行えない状況でした。また、リリースから10年以上が経過し、古臭さを感じるユーザーインターフェース(UI)も問題となっていました。
最適な提案かつ低コストだったのが「Re@nove」
ー 「DREAMS DB」の再構築において、「Re@nove」を選定した理由を教えてください。
2014年春から「DREAMS DB」の再構築に向けた取り組みをスタート。その後、MULと調整を進め、2015年9月にはMULでも実績のあるベンダー3社にRFPを依頼しました。そこで、当社はシーイーシーを選定しました。選定理由は以下の通りです。
<既存システムをよく理解したうえでの最適な提案>
提案前に既存システムの構造からソースコードまで全体をシーイーシーに見ていただきました。その結果、シーイーシーは「これを捨ててしまうのはもったいない」と判断。そこで、既存資産を有効活用しつつ、既存システムの可視化および診断分析から、成長戦略を踏まえたプランニング、金融機関向けのクラウドサービスに対応しつつ新環境への移行/再生、中長期を見据えた保守運用までをカバーするマイグレーションサービス[Re@nove]を提案していただきました。
<低コスト>
単純にコスト面だけを重視したわけではありませんが、シーイーシーの「Re@nove」は新システムを短期間かつ低コストで実現できるとのこと。実際、移行コストの抑制や柔軟性の向上のため、リノベーション先のシステム基盤としてクラウドを使うことやOSSの積極的な活用は、非常に興味深い提案でした。
<金融機関に準じたセキュリティ基準をクリア>
再構築にあたり、MULが総合ファイナンスグループということもあり、金融機関に準じた基準を満たすセキュリティレベルを実現する必要がありました。この点に関しては、シーイーシーのトータルセキュリティソリューション「Cyber NEXT」の観点から包括的に検討。単にシステムの提案だけでなく、脆弱性診断からスタートし、設計・構築からリリース後の運用監視、保守までを提案いただいたことで、MULのセキュリティレビューをクリアすることができました。
要件定義に着手したのは2016年5月。既存コードをできるだけ活かすことを前提にUI画面の刷新を進めていき、2016年9月にはクラウド(Azure)上での開発およびテストがスタート。2017年5月にはデータ移行が完了し、新システムによるサービスが始まりました。
■リノベーションの流れ
■リノベーションサービスで実現
- ・基幹システムとの密結合を疎結合に変更
- ・全面的にユーザビリティの高い画面にリニューアル
- ・既存コードを最大限に活かした「リノベーション」
- ・AzureとOSS(オープン・ソース・ソフトウェア)の活用
- ・金融機関に準拠したセキュリティ基準
- ・最短2週間で改修可能な圧倒的なスピードを実現
- ・開発コストはスクラッチ開発の約半分
- ・クラウド活用により柔軟なリソース変更
※「Re@nove」によるリノベーションの概要
新システムはAzure上でWindows Serverが稼働する仮想マシンを立ち上げ、その上でApache HTTP ServerやJBoss Application Server(WildFly)、SQL Serverを動かす構成。基幹システムが置かれたデータセンターとはExpress Routeで接続しており、安定した帯域と通信の安全性を確保している。
「Re@nove」によってリノベーションした「DREAMS」
ー 「Re@nove」を活用し移行した現在の「DREAMS」は、どのように変わったのでしょうか?
「Re@nove」によってリノベーションすることができた現在の「DREAMS」は、以下の効果が得られています。
<最短2週間で改修可能>
新システムへ移行したことで、機能追加や改修に必要な期間は大幅に短縮されました。例えば、急な要件が発生した場合、以前の環境であれば3カ月程度を必要としていたのに対して、軽微な改修であれば2週間、設定変更や単純な修正であれば発見したその日に改修を行い、その翌日にはリリースできるようになりました。お客様の満足度向上にも貢献していると感じています。
<クラウド化による柔軟なスペック変更にも対応>
仮想マシンのスペック変更が容易になったことも大きなメリットです。オンプレミスの場合にはスペックが固定されるため、急激な負荷増大が発生すると他のお客様に影響が出てしまいますが、クラウドならその心配はありません。大量のデータ登録を行う場合でも、一時的にCPUやメモリーを増強することで、安定したパフォーマンスが確保できてます。データ登録作業が終わったら、サーバースペックを元に戻すことで、必要以上のリソース消費も回避できました。
<セルフサービス機能が拡充>
セルフサービス機能の拡充により、これまでお客様から依頼を受けてディーアールエス社内で実施していた作業の一部をお客様自身が行えるようになった点も評価ポイントです。お客様自身がオンラインで一括登録できる機能も用意されているため、これをご利用いただければデータベースにすぐに反映できます。
<開発コストはスクラッチ開発の約半分>
システム移行のコストを抑制できました。既存システムとの比較は難しいのですが、オンプレミスでフルスクラッチ開発した場合と比べれば、初期構築コストを半分程度に抑えられたと思います。セルフサービス機能が拡充されていますから、将来的には当社の人的コストも削減でき、サービス全体のコスト削減にもつながっていくと考えています。
ー 最後にシーイーシーに対する今後の期待をお聞かせください。
今後の変革に挙げているのは、サービス全体の電子化です。現在、紙で行っているサービスの申し込みを含め、すべてオンラインでの対応を検討しています。また、お客様ごとのニーズに合わせてサービス内容にバリエーションをもたせ、それによってサービス価格を多様化することも考えています。シーイーシーには、当社の事業発展に貢献する「ビジネスパートナー」として、今後も手厚いサポートを希望しています。