CASE
品質・性能を重視した事前調査・PoCによる徹底検証でリリース後安定稼働
課題
IBMメインフレーム(COBOL)のオープン化が急務
今後の開発・保守に対応できるエンジニアの確保が不透明
リホスト後のディレードバッチ処理性能の維持
効果
リホスト方式を採用、COBOLの既存ロジックを崩さない変換により品質を確保
オープン系COBOLでメジャーな製品に変換するため、エンジニアを確保しやすい
本番機による性能評価を実施、業務に影響を与えない処理性能を実現
導入の背景・課題
制度商品領域のシステム開発に携わる
日興システムソリューションズ株式会社は、三井住友フィナンシャルグループ傘下の証券会社、SMBC日興証券株式会社の金融システム開発・保守・管理業務を担う企業。同社はSMBC日興証券グループの一翼を担い、人間力と情報技術力で金融ビジネスの成長戦略を支えている。
同社において、今回のRe@nove リホストマイグレーションを主幹した証券業務システム二部は、制度商品領域のシステム開発に携わる部門だ。その部門について証券業務システム二部長 大井 和馬氏は「証券業務システム一部はお客さまからお預かりした預り金やお客さま向け帳票、証券業務システム三部は株の売買のシステム開発を担当しています。証券業務システム二部は制度商品システム課、投信システム課、債券システム課の3つに分かれており、我々が担当しているのは持株、財形ミリオン、ストックオプションなどの領域に携わる制度商品システム課です。」と語る。
日興システムソリューションズ株式会社 証券業務システム二部長 大井 和馬氏
メインフレームのオープン化が急務
日興システムソリューションズのメインフレームのオープン化の状況について大井氏は「当社には長年稼働しているメインフレームの金融システムがあります。もちろん、レガシー対応ということでオープン化は随時進めてきました。ただ、メインフレームを熟知したエンジニアの枯渇が危惧されていますから、当社としてはメインフレームを縮小、局所化する方向で動いています。」と語った。
こうした状況のなか、制度商品システム課はIBMメインフレームで稼働している制度商品領域のオープン化に取り組むことになった。これまで行ってきたオープン化は、PL/Iやアセンブラだったため、スクラッチのリビルドで行ってきたが、今回の制度商品領域の大部分はCOBOLだった。「PL/Iやアセンブラと違い、COBOLなら既存のロジックを崩さずにリホストで対応できるのではと考えました。そこで協力ベンダーにお声がけし、リビルドとリホストそれぞれの提案をお願いすることにしました。」(大井氏)
移行方式とベンダーの選定
品質を担保できるリホスト方式を採用、実績を重視してシーイーシーを選定
リビルドとリホストの提案のうち、シーイーシーが提案したリホスト方式を採用した。その理由について証券業務システム二部 次長 兼 制度商品システム課長 品田 忠志氏は「リビルドでは約3年半かかるところ、リホストなら約3年で開発できると試算。さらに、リホストのエミュレーターで不具合なくCOBOLを変換できれば十分に品質を担保でき、かつ低コストでマイグレーションできると判断しました。」と語る。
リビルド
(採用)リホスト
手法
業務プロセスおよびアプリケーションを見直し、システムを再構築
業務プロセスおよびアプリケーションを見直さず、新環境に合わせて変換
コスト
高
低
期間
長期
短期
<表:移行方式の選定>
日興システムソリューションズ株式会社 証券業務システム二部 次長 兼 制度商品システム課長 品田 忠志氏
ベンダーとして選定したシーイーシーについては、品田氏いわく「実績を重視しました。まず、シーイーシーは制度商品領域で長く協業しているベンダーで、当社における実績は十分。また、エミュレーターツールとして提案いただいたMicro Focus Enterprise Serverは、金融機関への導入実績が豊富で安心感がありました。さらに、同製品に組み込まれているCOBOLは、オープン系COBOLの中では、メジャーな製品ということもあり、今後の開発・保守にあたってエンジニアを確保しやすいというメリットがあると考えました。」とのこと。そして、2018年3月からシーイーシーによる制度商品領域のリホストマイグレーションがスタートした。
リホストマイグレーションへの評価
想定内の開発期間でカットオーバー
リホストマイグレーションは予定通り、3年の構築期間を経て2021年3月に運用開始となった。最終的にCOBOLの比率は9割、残りの1割はPL/Iとアセンブラ。プログラム数は1,000本以上、ステップ数も相当数に及んだ。今回、時間をかけたのは事前調査からPoC、要件定義のフェーズ。これについては「大事なのは、事前調査のなかで実際にオープン系COBOLに変換できるところをチェックすることでした。後からダメだったでは開発期間に大きな影響が出てきます。ですので、まずは時間をかけて確実にリホストできるところに注力しました。これにより、例えば約1割のPL/Iとアセンブラについても、COBOL化後のエミュレートで問題なく解決できました。」と証券業務システム二部 藤城 司氏は語る。
日興システムソリューションズ株式会社 証券業務システム二部 藤城 司氏
事前調査・PoCによる徹底検証
今回のリホストマイグレーションについて、「日中、バックグラウンドで大量のデータを処理するディレードバッチ処理がメインフレームからオープン化することで既存と同等の処理性能を満たせるかという懸念がありました。」と藤城氏はシーイーシーと調整しながら進めることができた点を評価している。 「PoCの段階で開発機ではなく、本番機で正確なバッチ処理時間を検証。関係部門と原因調査や対応方法の協議を重ね性能課題をクリアしてリホストを実施しました。その結果、業務に影響を与えない処理性能を実現することができました」とシーイーシー サービスインテグレーションビジネスグループ ビジネスシステム事業部 証券サービス部 角 茂昭は当時を振り返る。
株式会社シーイーシー サービスインテグレーションビジネスグループ ビジネスシステム事業部 証券サービス部 角 茂昭
トランザクション処理用のミドルウェア、CICS(Customer Information Control System)についても藤城氏は懸念していた。これに対しては「トータル36のルール※ にそってオープン系COBOLに変換する必要があったため、変換後の動作や処理性能に不安がありました。この点についてシーイーシーは、問題になりそうな部分を切り分けて適宜カスタマイズを実施。不安点を解消しながらリホストを進めることができました。」と藤城氏はシーイーシーの対応を評価する。
※トータル36のルール:エミュレーターで変更できたものと、カスタマイズして変換するものを分類した36の変換ルール。
今後の展開と期待
さまざまな提案に期待
リホスト後、制度商品領域のシステムは想定通りの性能で安定稼働している。夜間のバッチ処理においては、以前より処理速度が向上しているという。今後の展開について大井氏は「これまで行ってきたオープン化の進捗状況は全体の約半分。まだまだ規模が大きいシステムも残っています。オープン化が終わるのは、OSのバージョンアップなど更改のタイミングを考慮して、現段階では2025年度を着地点にしています。」と語っている。
制度商品領域で多くのエンジニアがアサインされているシーイーシーに対しては、同社も大きな期待をかけている。「シーイーシーからはPL/Iのリホストも可能だと伺っています。さまざまな提案をいただければ期間や費用面を考慮したうえで前向きに検討していきたいと考えています。」と大井氏は、シーイーシーの技術力に期待していると語った。
日興システムソリューションズ株式会社 様
1977年12月、日興證券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)のシステム部門を母体とする株式会社日興システムセンターとして創立。以降、SMBC日興証券向けシステムの開発・運用に携わりつつ、他の総合証券会社や金融機関向け投信販売管理システムを開発・運用するなど着実にフィールドを拡大している。SMBCグループの一員となった現在、グループの中核企業として証券ビジネスと銀行ビジネスを融合させた新たなビジネスモデルの構築を展開。証券・金融分野におけるシステムインテグレーターとしての役割に邁進し、グループのICTインフラを支え、ビジネス進化のために必要不可欠なICTのプロフェッショナル集団として、その存在感を増している。
本 社:〒230-0032 神奈川県横浜市鶴見区大東町12-1
代表者:取締役社長 岩田 滋
事業内容:証券・金融システムに関するシステムインテグレーションサービス・システムソリューションサービス
URL:https://www.nksol.co.jp
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